第6話 何を思ってもいい。

朝・自宅にて

ミサキ(小3)
でねー。ミカコちゃん、ムカツクからさ。
ミサキ
「ウザい!」って言ってやったんだー。
ミドリさん
ちょっと、そんなこと言わないの。
ミサキ
え・・。
ミドリさん
お友達とは仲良く。悪口言っちゃダメだよ。
ミサキ
はい・・・。
ミドリさん
ミカコちゃんにだって良いトコあるはずだよ?
ミサキ
・・うん。

 

 

昼・自宅にて

ミドリさん
そわそわ・・・
アゲアゲくん
落ち着かないですね?
ミドリさん
え?
アゲアゲくん
そわそわしてますよ。
ミドリさん
そうかな??
アゲアゲくん
何かあるんですか?
ミドリさん
・・・。えっと。
ミドリさん
母さんが帰ってくるの。
アゲアゲくん
長期旅行から、でしたっけ。
ミドリさん
うん。リフレッシュ休暇なんだって。
アゲアゲくん
どれくらい?
ミドリさん
三ヶ月。
アゲアゲくん
長くないですか?
ミドリさん
うん。なんか度々休んでいるよ。
アゲアゲくん
何の仕事をされているのですか?
ミドリさん
先生だよ。
アゲアゲくん
どこの?
ミドリさん
中学校。
アゲアゲくん
先生って三ヶ月も休めるんですね。
ミドリさん
・・。んー。
ミドリさん
リフレッシュ休暇ではないのかもしれないね。
アゲアゲくん
どういうことでしょう?
ミドリさん
母さん見栄っ張りなんだ。
ミドリさん
先生の仕事うまくいってないみたいで。
ミドリさん
ホントは休職してるんじゃないかな。
アゲアゲくん
「リフレッシュ休暇」ということにしている?
ミドリさん
表向きはね。
アゲアゲくん
お母さんはどんな人なのでしょう?
ミドリさん
見栄っ張りで堅物。理屈屋で常識人。いかにも先生だよ。
アゲアゲくん
休職を恥とか思ってるんですかね?
ミドリさん
そうだと思うよ。
アゲアゲくん
あぁ。
アゲアゲくん
・・・。えーっと。
アゲアゲくん
嫌な予感がします。
ミドリさん
え!?なになに?
アゲアゲくん
お母さんはサゲ人かもしれません。
ミドリさん
サゲ人!
ミドリさん
・・ってサゲ人ってなんだっけ?
アゲアゲくん
あっはっは。
アゲアゲくん
ミドリさんが萎縮しちゃう相手ですよ。
ミドリさん
萎縮しちゃう??
アゲアゲくん
長く一緒にいるのにも関わらず。
アゲアゲくん
言いたいこと言えない。我慢しないと付き合えない。
アゲアゲくん
自分を出せない。
アゲアゲくん
そんなミドリさんが受け身になっちゃう相手。
ミドリさん
それがサゲ人?
アゲアゲくん
そうです。
ミドリさん
私、受け身なんですけど・・・。
アゲアゲくん
・・・。誰に?
ミドリさん
人間関係全般。
アゲアゲくん
うーむ。
アゲアゲくん
自分の気持ちこそが太陽ですよ。
ミドリさん
萎縮するなってこと?
アゲアゲくん
するなといってもしちゃうでしょ。
ミドリさん
んー難しいー。
ミドリさん
私さ、気持ち引っ込める方が楽というか・・・。
アゲアゲくん
ズバリ聞きます。
アゲアゲくん
お母さんに素直な自分を出せていますか?
ミドリさん
・・・。出せてない、かな。
アゲアゲくん
さっき、ミサキちゃんに「悪口言うな」と怒ってましたね。
ミドリさん
え?そうだけど。見てたの?
アゲアゲくん
あれ、イカンですよ。
ミドリさん
え?え?え!?
アゲアゲくん
「悪口言ってはいけない。良いトコ探ししなさい」
アゲアゲくん
サゲ人が好むワードです。
ミドリさん
・・・。えー。なんで??
ミドリさん
優しい人って悪口言わないものじゃないの?
アゲアゲくん
それは偽りです。太陽じゃなくて月ですね。
アゲアゲくん
今、そわそわしている理由は。
アゲアゲくん
偽りの自分に戻るのを恐れているのでは?
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ドキドキしてきた・・。
アゲアゲくん
なぜドキドキするんでしょうね。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
お母さんはサゲ人だと思います。
アゲアゲくん
普通、そわそわしないものですよ。
ミドリさん
そ、そうだよね。
アゲアゲくん
お父さんのことどう思ってました?
ミドリさん
嫌いだったね。
アゲアゲくん
お母さんは?
ミドリさん
味方・・かな。
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
味方が帰ってくるのに、そわそわしちゃいますか。
ミドリさん
あ・・・。
アゲアゲくん
なぜ味方だと思うのでしょう?
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
な、なんでだろう・・・。
ミドリさん
ゴメン、分かんないよ。
ミドリさん
変?間違ってる??
アゲアゲくん
間違ってないですよ。
アゲアゲくん
お母さんと色々なこと、あったんですね。
ミドリさん
・・・。えっと。
アゲアゲくん
あぁ。聞いてください。
アゲアゲくん
ミドリさん。
アゲアゲくん
何を、どう思ってもいいんですよ。
アゲアゲくん
ミドリさんは大人になりました。
アゲアゲくん
もう選んでいいのです。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
誰を、どう思ってもいいのです。
ミドリさん
そ、そんなこと・・・
アゲアゲくん
ビックリしてますか?
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
きっとお父さんやお母さんはサゲ人。
アゲアゲくん
サゲ人と一緒にいると、自分の気持ちがなくなっていきます。
アゲアゲくん
誰が好きで、誰が嫌いか分からなくなる。
アゲアゲくん
楽しいことや好きなことを忘れる。
アゲアゲくん
棚からぼた餅。ラッキーを待ち続ける人生になる。
ミドリさん
・・・ちょ、ちょっと待って。
アゲアゲくん
ミドリさん
なんか怖くなってきた・・。
アゲアゲくん
・・・。これくらいにしておきましょう。
ミドリさん
・・・え?
アゲアゲくん
変化って怖いですからね。

 

夕方・自宅にて

ミドリ母
ただいまー。
ミドリさん
おかえりー。リフレッシュできた?
ミドリ母
まぁね。これお土産。
ミドリさん
ありがとう。
ミドリ母
ねぇ、聞いてよ。ホテルでの授業員がさ・・・。
ミドリさん
ん?
ミドリ母
てんでダメなの。態度もなってない。高い料金とってるくせに。
ミドリさん
・・・。母さんって。
ミドリ母
ご飯も手抜きだし、給仕に愛想ないし・・・。
ミドリさん
なんで土産話が愚痴になるんだろう・・。

 

~1時間後~

ミドリさん
まだ続くのか・・。
ミドリさん
今、何時かな?チラっ
ミドリさん
もう一時間も話してるじゃない・・。
ミドリ母
私、仕方ないから言ってあげたわ。
ミドリさん
なんて?
ミドリ母
「そんな暗い顔したらお客さん逃げるわよ」って。
ミドリ母
そしたら「はぁ・・」だって。
ミドリ母
普通、謝るか、感謝するところよね。
ミドリ母
私が気を利かせて言ってあげたのに。何も分かってないのよね、バカなのかしら。
ミドリさん
母さんも何も分かってないんじゃ・・・。
ミドリ母
でさー。
ミドリさん
早く終わんないかな・・。
ミドリ母
いっつも私が言わなきゃいけないのよね-。
ミドリさん
母さんがサゲ人・・・。
アゲアゲくん
そのようです。
ミドリさん
わ!
アゲアゲくん
自分出せてないですね。
ミドリさん
あ、で、でも。
ミドリさん
土産話くらい聞いてあげないと。
アゲアゲくん
それが優しさですか。
ミドリさん
う・・。違うかな。
アゲアゲくん
ミドリさんが今しているのは我慢でしょう。
ミドリさん
あぁ、そうだ。我慢してるよね。
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
いいですか、ミドリさん。
アゲアゲくん
誰を、どう思ってもいいのです。
アゲアゲくん
もっともそうな理屈に負けないでください。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
もう話終わりたいんでしょ?
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
なら終わらせましょう。
ミドリさん
でも、これ終わんないよ。
アゲアゲくん
どうしても終わらせられないなら。
アゲアゲくん
聞いてるフリしましょう。
アゲアゲくん
「早く終わらないかな」
アゲアゲくん
これがミドリさんの本音じゃないですか。
ミドリさん
うん・・。
アゲアゲくん
何を、どう思うのも自由なのですよ。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
本音を忘れないでくださいね。
ミドリさん
本音を忘れない・・・。

 

 

【アゲアゲくんの教え】

誰を、どう思ってもいい。