第9話 絶対ダメってことはない

商店街にて

~ミドリさん、ミサキ、アゲアゲくん散歩中~

アゲアゲくん
アゲようっ♪
アゲアゲくん
アゲようっ♪
アゲアゲくん
わたしはげんきー♪
アゲアゲくん
アガるのだいすきー♪
アゲアゲくん
どんどんアゲよう♪
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
ところでミドリさん♪
アゲアゲくん
ミサキちゃん連れてどこへ行くのでしょう。
ミサキ
・・・。
ミドリさん
カフェだよ。
アゲアゲくん
ケーキを食べに行くのですね。やった♪
ミドリさん
ミサキの勉強しにいくんだよ。
アゲアゲくん
はぅ!
アゲアゲくん
な、なぜそのような事を・・。
ミドリさん
カフェの方が集中できるでしょ。

 

カフェ・モンドール

店員
いらっしゃいませー。
ミドリさん
何を飲みたい?
ミサキ
ソフトクリーム食べたい。
ミドリさん
飲みたいのはないの?
ミサキ
ココア。
ミドリさん
すみません、ソフトクリームとココア。
ミドリさん
あとコーヒーのレギュラーとミルクレープ一つください。
店員
かしこまりましたー。お席でお待ちください。

 

ミサキ勉強中

ミドリさん
ホラ、漢字ばかりやってないで。算数もしなさい。
ミサキ
やだー。これ終わってから。
ミドリさん
何言ってるの。漢字得意だからやりたいだけでしょ。
ミドリさん
苦手なのも頑張らなきゃ。
ミサキ
・・・。
ミドリさん
 あ、教科書に落書きしてるじゃない。
ミサキ
・・・。
ミドリさん
いい?落書きなんて絶対ダメ。
ミドリさん
先生に怒られるし、友達から馬鹿にされるよ。
ミサキ
みんなやってるし、笑ってるよ?
ミドリさん
絶対ダメ。モノは大事にしなさい。
ミドリさん
・・・。って。
ミドリさん
さっきから何落ちこんでるのよ?アゲアゲくん。
アゲアゲくん
サゲサゲだなぁって。
ミドリさん
サゲサゲってなによ?
アゲアゲくん
アゲアゲの逆ですよ。
ミドリさん
なんだか失礼ね。
アゲアゲくん
褒めてないですからね。
ミドリさん
あ、ミサキ!まだ漢字ドリルやってる。
ミサキ
ビクッ!
ミドリさん
いい?わざわざお金払ってココにいるんだよ?
ミドリさん
遊びに来たんじゃないの。分かってるの?
ミサキ
・・・。イラ
ミドリさん
算数何点だった?みんなから遅れてるんだよ?
ミサキ
うるさい!!
ミドリさん
いい加減にしなさいっ!!
アゲアゲくん
ミドリさん、ミドリさん。
ミドリさん
・・ハッ!
ミドリさん
ゴメン。大きな声出しちゃった。恥ずかしい・・。
アゲアゲくん
そこではなくて。
アゲアゲくん
なーにをこだわっているのでしょう。
ミドリさん
何もこだわってないよ。
アゲアゲくん
今の気分は?
ミドリさん
良くないね。
アゲアゲくん
じゃあどこか間違ってますよ。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
そうかもしれないね。
アゲアゲくん
いつもこんなことしてるのですか?
ミドリさん
勉強しに?よく来るよ。
アゲアゲくん
なんで?
ミドリさん
勉強させるのが親の務めでしょ。
アゲアゲくん
いえ全く。
ミドリさん
そんなわけないでしょ。
アゲアゲくん
それがサゲ人の発想なのですよ。
ミドリさん
責任はどうなるのよ?
アゲアゲくん
そんなものないですっ!
ミドリさん
・・・。あのさ。
ミドリさん
ミサキは私の目を盗んで、すぐ遊ぶんだよ。
ミドリさん
私だってカフェで勉強の見守りなんてしたくないよ。
ミドリさん
でも、私が手を抜いたら、この子はどんどんダメになっていくんだよ?
ミドリさん
それをなに!?
ミドリさん
「いえ全く」って笑っちゃってさ!
ミドリさん
私が悪いの!?頑張ってるのに何よ!?
アゲアゲくん
ゴメンナサイ。笑ったことは謝ります。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
うーん、そうですねぇ。
アゲアゲくん
ミドリさんはどんな親子でいたいですか?
ミドリさん
仲の良い親子でいたいよ。
アゲアゲくん
今、正反対じゃないですか。
ミドリさん
そうだけど・・。
アゲアゲくん
「親の責任だから」と思っているのですね。
ミドリさん
そうだね。
アゲアゲくん
とらわれてますよ。
ミドリさん
・・・。何に?
アゲアゲくん
「絶対ダメ」ととらわれてます。
ミドリさん
んー??
ミドリさん
そういうものじゃないの??
アゲアゲくん
そうでもないですよ。
アゲアゲくん
「人は自由だ」
アゲアゲくん
本気でそう思っている人もいますよ。
ミドリさん
それいい加減なだけじゃ・・・。
アゲアゲくん
いえいえ。自由と真面目は両立します。
ミドリさん
子どもに対しても自由なの??
アゲアゲくん
そうそう。
ミドリさん
悪い子になっちゃうよ?
アゲアゲくん
あっはっは。心配ご無用。
アゲアゲくん
人はみな善なのです。
ミドリさん
ミサキ、遊んでばっかになるよ?
アゲアゲくん
心配しすぎですよ。
ミドリさん
ダメだよ、そんなの。
アゲアゲくん
なんで?
ミドリさん
あとで恨まれるよ、きっと。
アゲアゲくん
縛り付ける方が恨まれるのですよ。
ミドリさん
私、縛り付けてるの??
アゲアゲくん
そう思われているでしょうね。
ミドリさん
私は良かれと思って・・・。
アゲアゲくん
善意を利用する教えがはびこってるんですねぇ。
ミドリさん
??
アゲアゲくん
おっと話逸れました。
アゲアゲくん
アゲアゲレッスンといきましょう。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
「絶対ダメ」を減らしてください。
ミドリさん
どういうこと?
アゲアゲくん
「絶対ダメ」と思ってることが多いハズです。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
優しさとは寛容。
アゲアゲくん
絶対ダメを減らすと寛容になれますよ。
ミドリさん
そ、そうか。当たり前だね。
アゲアゲくん
とりあえずお家に帰りましょうか。
ミドリさん
え??
アゲアゲくん
「勉強しなきゃ絶対ダメ」なんてないのですから。
ミドリさん
あ、あぁ。分かったよ。帰ろう。
ミドリさん
ミサキ帰ろっか。
ミサキ
・・・。

 

ギィミサキ席を立つ)

 

ミドリさん
穏やかに言えたな、私。
アゲアゲくん
ちょっと寛容になれてますよ。
ミドリさん
良かった
アゲアゲくん
「絶対ダメ」がどれだけ多いか、僕がチェックしますよ。
ミドリさん
よろしく!

 

翌朝

ミドリさん
もう!何時まで寝てるの!?
ミサキ
やだー。
ミドリさん
遅刻なんて絶対ダメだからね。
アゲアゲくん
ホラ、言ってますよ。
ミドリさん
ハッ!?

夕方

ミサキ
きゃはは。キモいー!!
ミドリさん
ちょっと!
ミドリさん
「キモい」なんて言葉使わないの。
ミサキ
え・・・。
ミドリさん
「キモい」なんて汚い言葉なんだよ。
ミドリさん
人に向けて言っちゃ絶対ダメだからね。
アゲアゲくん
ホラ、言ってますよ。
ミドリさん
ハッ!?

ミドリさん
そろそろお風呂入りなさいー。
ミサキ
きゃはは。※テレビ鑑賞中
ミドリさん
ムカ。
ミドリさん
もう9時だよ。
ミサキ
お風呂入らなくてもいいよー。
ミドリさん
あのね。お風呂入るなんて当たり前のことなの。
ミドリさん
ミサキは遊びたいだけでしょ。
ミドリさん
そんな理由で入らないなんて絶対ダメよ。
アゲアゲくん
ホラ、言ってますよ。
ミドリさん
ハッ!?

深夜

ミドリさん
アゲアゲくん。
アゲアゲくん
はい?
ミドリさん
口癖になってるね。
アゲアゲくん
その気づきが大事なのですよ。
ミドリさん
大事なこと教えてるつもりなんだけどなー??
アゲアゲくん
あっはっは。教えずとも良いのですよ。
ミドリさん
・・・。意味わからん。
ミドリさん
代わる言葉が要る気がするよ。
アゲアゲくん
グッドアイデアですね。
ミドリさん
何がいいかな?
アゲアゲくん
「ま、いいか」なんてのはどうでしょう?
ミドリさん
なるほど。
ミドリさん
よし。意識してみるよ。

 

翌朝

ミドリさん
ほら、起きなさいー。
ミサキ
学校行きたくないー。
ミドリさん
ムカ。
ミドリさん
ぜったい・・
ミドリさん
あ、ここだ。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ま、いいか。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ほら、もう起きて。ご飯食べてよ。
アゲアゲくん
柔らかくなりましたね。良いですよ。
ミドリさん
うん。自分でも良い感じと思った。
アゲアゲくん
嬉しいでしょ?
ミドリさん
あ、たしかに。嬉しいね。
アゲアゲくん
それがミドリさんのやり方なのですよ。

 

夕食

ミドリさん
ブロッコリー残ってるよ。
ミサキ
食べたよー。
ミドリさん
端っこかじっただけじゃない。半分は食べなさい。
ミサキ
ヤダ!
ミドリさん
ムカ。
ミドリさん
・・あ、ここか?
ミドリさん
ま、いいか。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
かじっただけでもいいか。
ミドリさん
ミドリさん
そうか。褒めてもいいんだ。

 

翌朝

ミサキ
ごちそうさまー。
ミドリさん
アスパラ残ってるなー。
ミドリさん
ま、いいか。一つは食べたんだし。
ミドリさん
一個食べたんだね。エラいね。
ミサキ
うん♪
ミサキ
いってきまーす♪
ミドリさん
いってらっしゃい♪

 

深夜

ミドリさん
アゲアゲくん。
アゲアゲくん
はいはい。
ミドリさん
分かってきたよ。
アゲアゲくん
ほうほう♪
ミドリさん
昨日、ミサキがブロッコリ-残したんだよ。
ミドリさん
端っこかじって「もう食べたくない!」って。
ミドリさん
イラっときたんだけどね。
アゲアゲくん
ふむふむ。
ミドリさん
「ま、いいか」と心の中でつぶやいたらさ。
ミドリさん
「かじっただけでも、良いことじゃん」
ミドリさん
そう思えたんだ。
アゲアゲくん
良い気づきですね。
ミドリさん
今日は、アスパラ残したんだけどね。
ミドリさん
一口食べたことを褒められたよ。
アゲアゲくん
アゲアゲですねぇ。
ミドリさん
仲の良い親子になれる気がしてきた。
アゲアゲくん
ぜったいなれますよ♪
ミドリさん
おやすみ、アゲアゲくん。
アゲアゲくん
おやすみなさいー♪

 

【優しい人になる方法】

絶対ダメを減らす